Beyond the Silence

Sound of Science

岐路

数日前、ある方からメールを頂いた。
数か月前に発表した国際学会で話をした方で、新しい実験手法を開発していい論文が出たので研究費が取れそうだから、うちに働きにこないかという内容だった。


既に別のラボへの留学の話が進んでいるところだが、複数の情報筋によるとそちらのラボは運営母体の病院自体がリーマンショックの煽りをうけて経営難に陥っており、受け入れてくれることになっているボスもそこを離れたがっているとのこと。ラボを移転するとなると少なくとも前後数か月は実験どころではないだろうし、ノックアウトマウスを主戦力にしているラボだけにマウス系統の立ち上げに長い時間を要するだろう (実験用のマウスを他の飼育施設へ移すときは一度精子か受精卵にしないといけないことがほとんど)。


所変わって自分の所属する医局をみると、教授が代わるという転換点を間近にしている。まだその座に誰が選ばれるのかはわからないが・・・。自分達の世代が次の医局の屋台骨にならないといけないと思っているし、それだけの実力者が揃っているという自覚もある。同期とよくそういう話をするので、その中で埋没しないように個性を発揮していく方法を、個人個人が考えている時なのだと思う。自分には何があるのかと考えたとき、ずっとやってきた研究を今後も発展させて医局のひとつの柱とする以外にないと思い当たった。そのためには自分が力をつけること、結果を出すことに加えて、同じように研究をしている後輩達をうまく導かなければならない。果たして自分にそれだけの能力があるのか?


研究費が取れるかどうか、ラボが移転するかどうかなど未確定の要素は多いけれど、留学先を選べるという幸運に恵まれた。新しい実験手法の論文がpublishされるまでの数週間、じっくり考えてみたい。