Beyond the Silence

Sound of Science

18歳の自分へ伝えたいこと

ブログを改めて始めてみると、まぁ自分が書きたいと思った大抵のことは誰かによって既に書かれているものだということに気がつく。

歴史の長いブロガーだとその情報量や完成度も高く、"ホームページ"時代からWebに向き合ってきたとは言っても本業ではない自分など足下にもおよばない。それでも、このブログを始めた目的は自分のための記録であること以外に、研究のおもしろさ、海外留学の魅力等を誰かに (もしかしたら昔の自分に)少しでも伝えたいという密かな願望の実現でもあるので、先人達の知恵を借りながら (科学の世界の流儀で)書いていきたい。

 

langsam : 大学院生活を全うできそうなので、淡々と振り返ってみる - livedoor Blog(ブログ)

今回インスパイアされたこのブログ主さんは東大の博士まで行ってポスドクになった方。今はアメリカにおられるようだ。

どうも俺がよくネットで見かけるのは大学院から遠ざかっていく人の言動ばかりなので、博士課程を最後までやった1人として簡単に書いてみようと思いました。

 と書かれているように、研究は決して楽ではない、誰もに適性があるわけではない (そして飛び込んでみないと適性があるのかどうかわからない)世界なので、特に大学院をどうしようか迷っているくらいの世代向けの情報はネガティブなほうに偏りがちな気がする。なので、このブログでは研究者としての悦びとか人生において役に立った事などポジティブな側面も紹介したいと思う。

1.博士課程まで進学した(できた)理由
2.大学院生活のライフスタイル
3.経済的な問題
4.業績に至るまで
5.これから大学院生活を目指す人へ

この流れをこちらも踏襲させていただくと、

  1. 博士課程まで進学した理由
    医学部は特殊なので参考にならないかも。医学部 (医学科)自体が6年間なので、学部+修士のような扱い。卒業時にもらえる資格は"学士"のようだけど。
    最初は理論系の、その後は生物系の研究者志向だったので、所謂研修医が終わると同時に大学院に入り、若い教授が立ち上げたばかりのラボを選んだ。

  2. 大学院生活のライフスタイル
    ・7時半起床
    ・8時半ラボへ
    ・11時半〜12時半のどこかで昼食 ラボのミーティングルームで皆で食べる感じの雰囲気だった。くだらない雑談も楽しかった
    ・バイトがある日は17時、ない日は21時、動物都合で遅い日は25時くらいまで実験
    ・0〜2時就寝
    ・時々実験のため4時起床、5時から実験もたまにあった
    時間的には動物のサイクルに合わせるため過酷なときもあったけれど、医師の仕事に比べれば自分でコントロールできるだけまだ良かった。自分が在籍していた頃はラボに人が多くて、うまくいかない時でも気晴らしの雑談ができたのが幸いだったかもしれない。圧迫感の少ない教授だったのでプレッシャーに弱い自分にも合っていて、そういう意味でも環境というのは
    大学院の研究環境は明らかに研究室に依存する
    のだと思う。自分の性格や能力に合ったラボを偶然選べたというのは幸運だった。

  3. 経済的な問題
    ラボはnon MDでPhDの人たちが中心で、いわゆるネーベン (医師免許の必要なバイト)に行くのは肩身が狭かった。週1の半日外来+週1の当直+月1の土日当直+月1の急患診療所に行くのが精一杯。結婚していたのでこれと奨学金を足して何とか生活する感じ。臨床系のラボに行った友人などは自分の数倍稼いでいた。このあたりは体力と環境次第かもしれない。バイトの間は実験できないストレスもあったが、今思えばいい気分転換になっていた。
    生物系の院生とMDの院生と半々くらいだったので、TAやRAなどは生物系の院生に優先的に回っていた。

  4. 業績に至るまで
    大した業績はないのだが、ラボ内での最初の博士号取得者になった。ラボのメインテーマと少し違うことを独力でさせてもらって、3年かけてデータを積み上げた。このあたりの話は別の機会にしたいと思う。ちょうど大学院の講義でセレンディピティの話が出てきたのだが、1年目の終わり頃にやった実験での気づきが学位論文に繋がった。4年間で修了できる期限の5日前くらいに論文がアクセプトされ、大急ぎで学位審査の申し込みをした。
    このあたりの幸運も、そうでなかったらと思えば恐ろしいものがある。

  5. これから大学院生活を目指す人へ
    ポスドク難民という言葉もあるくらい就職難の時代が続いているので、簡単には勧められない。本当に研究が好きな and/or 向いている人でないと、続けていくのは難しいと思う。自分もあとどれくらい続けられるかわからないが。。
    誰も知らない真理を世界で最初に見ているのは自分かもしれない、という瞬間が生命科学系の研究者の醍醐味だと思う。これは癖になるので、ゼミ (生物系)や基礎配属 (医学系)などで親和性が高そうだと思ったら進路として検討してもいいかもしれない。進路決定は相応の覚悟を持って。

    あと、これは大学院というより学部以前の問題かもしれないけど、もし高校生くらいの誰かが生命科学をやろうと思うならば、医学部を薦めたい。その理由はみっつ。

    1) バリバリの基礎だけではお金 (研究費)が取りづらくなっている。トランスレーショナルリサーチの時代であり、基礎研究をやっていたとしても研究費の申請書には臨床応用への展望を語ったほうが良いケースが多い。医師としての勤務経験や知識があれば有利かもしれない。

    2) 何だかんだいって生活は大事。大学院の間はある程度自分で稼ぎながら研究をすることになるので、割の良いバイトができる資格は強い。

    3) もし夢破れて研究者の道を断念することになったとしても、医師として再出発することができる (それも茨の道かもしれないが、2015年現在仕事は必ず見つかる)。

数少ない経験から語れることはこれくらい。今18歳の自分に会えたとしたら、この記事をリンク先のその先まで辿って (孫引きして)読むことを勧めたい。自分はどの道を選ぶだろうか。

f:id:aurora3373:20150518045617j:plain