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Beyond the Silence

Sound of Science

優秀な医学生=良い医師 であるとは限らない

 

 

増田 (anonymous diaryの略)で、こんな記事が。

そして、それに応えるid:fujipon先生やid:p_shirokuma先生の熱いメッセージも読ませて頂いた。

いろんな想いを抱えて医学部6年間を過ごし社会に出て行く医学生時代とその前後を思い出し、自分の経験からも何か伝えられないかと思って筆を執る昼休み。ボスとのミーティングが終わって気が緩んでいるのか。正確にはもう昼休みは終わっているが、そこは研究職の強みだ。

 

医学部医学科は1学年100人前後。同級生100人もいれば色々な人がいるので、成績が良くて医学部に入った人、親の跡を継ぐために仕方なく来た人などもちらほらいた。

自分はといえば医師は親族のどこを見渡しても1人もいない家系だったが、成績が良かったためか父から医師になれと言われ続け、それに反発するように現役で理学部に入った。理学部在学中のあることがきっかけで自分の人生を見つめ直し、退学・再受験の道を選んだわけだが、医学部にストレートで入学してきたようなエスカレーター式医師純粋培養コースのキャピキャピした同級生を見て、自分は彼ら彼女らとは違うんだと思っていた記憶がある。話が合う人も中にはいたけれど、地方だったのもあって現役生が多く、最終的にはあまりクラスに馴染めなかった。

 

そんな、心のどこかに壁を作って過ごした医学部6年間だったが、社会に出てからのたくさんの出来事のほうが強烈かつ多彩で、実はあまり良く憶えていない。卒業したのはたかだか十数年昔なのに。

自分の場合は、在学中にいわゆるメンターとの出会いがあったりして、入学時かすかには持っていた医療に対する情熱みたいなものがPCRサイクルに入ったかのように増幅された時点で卒業したので、卒後はダメ学生だった頃の面影も消えて医師として働くことに違和感を覚えなかった。いろんな人に言われたのが、

  • 「『優秀な医学生』と『良い医師』は違う」*1
  • 「色々な患者がいるからこそ、必要とされない医師もいない」*2

ということだった。試験勉強の優秀さと医師としての資質は必ずしも比例しない。そして、医療が対人行為である以上相性の問題は必ず発生するので、多彩な人間がいたほうが良い。

決して優秀な学業成績を修めたわけでもなく人間的にも若干偏った自分が医師として頑張れたのはこれらの言葉のお陰でもある。働きながら広い世界を知り、研究を始めた。世界が広がれば自分に本当に合った仕事は見つかる・・・かもしれない。好きなことを仕事にすることが必ずしも良いとは限らない、適性は別のところにあるかもしれない。これも、飛び込んでみないとわからない部分がある。

 

上記のお二方、そして多くのトラックバックでも述べられているように、食うことだけを考えると医師免許はかなり良い資格。あと3年と少し試験をパスし続けて国家試験を受け、(3年後どうなっているかわからないが)臨床研修を受けると医師としてどのようにも働ける。それまでに考え方が変わっていく可能性もあるし、辞めるのは勿体ないのではないかなと思う。

仮に”普通”の働き方ができなくても、当直や健診など割のいいバイトもあるほか、専門領域だって多岐にわたるので、この増田さんの志望するようなコンピュータ関連に限りなく近い仕事もある。

最近は医工学連携も非常にホットなトピックで、手術支援ロボット (da Vinciとか)や3Dプリンタを利用した手術支援や再生医療応用など、新しい分野が次々に創生されている。医師免許をもつエンジニアとして働く、という選択肢もあると思う。研究者としてコンピュータ医学の分野を創出していくのも楽しい夢ではないかな。研究者が医師免許を持っていることのメリットも実は大きい。

 

現役で3年生だとまだ20か21歳。臨床医をやりながら大学院に入ってまた現場に戻って、アラフォーで研究留学をしているフラフラした自分からすると、若さ=無限の可能性にみえて羨ましい。精一杯悩んで迷って考えて、後悔の無いように決断してほしいと願う。

*1:もちろん優秀な学生がそのまま名医になるケースも多い

*2:人格的な問題で医師の適性がないケースは稀にあるが