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Beyond the Silence

Sound of Science

軌道修正?

今日は研究の話題を中心に。

 

毎週ボスと1対1でミーティングがあり、進捗報告と方針決定の場が設けられている。うちのラボは臨床系のボスと基礎のボスのjointed labになっており、基礎研究は基礎のボスがブレインとして統括し双方のポスドクの面倒をみている一方、自分の場合、給料は臨床のボスから出ているというねじれ構造になっている。このスタイルにはメリットがあって、基礎の人間にとっては臨床の空気に少しでも触れる機会があり (特にMD, PhDである自分には有り難い)、臨床のサンプルも入手しやすい。数か月に一度巡ってくる進捗報告会も、臨床の人間にわかるように話さないといけないので、プレゼンテーションの良い練習になる。尤も最大のメリットはグラントだと思われるが。

 

多忙な臨床のボスとは2週間に一度会えればいいほう。日本に比べるとその労働環境は、時間的にも空間的にも恵まれていると感じるが、それはファカルティ (Assistant professor以上)に限った話で、レジデントはポスドクに毛が生えた程度のサラリーらしい。看護師のほうがレジデントよりも待遇が良いのは日本と一緒かもしれない。が、いったんファカルティになるとそれまでの苦労が報われ、年収は数倍に跳ね上がる。うちの病院では、ファカルティには一人一人専属の秘書がつき、外来などで生じる雑務は基本的にやってくれる。仕事が倍増する日本の助教と大違いである。教授クラスになると、ひとによっては億稼ぐらしい。

ただ、Assistant professorになるまでの道程も当然ながら厳しく、大学を優秀な成績で卒業し、在学中に生命科学系のラボで研究の実績も挙げて推薦状を得、メディカルスクールに入って勉強漬けの日々。成績順に希望する科のレジデンシーへアプライ。科によっては倍率数十倍。医局が勧誘などやっている日本とはえらい違いである。

運良くレジデントとして採用されると、週1~2回のオンコールを含む厳しい修行が数年続く。コアタイムは朝7時半〜夕方6時くらいのようだ (日本も同じようなものか*1 )。それまでの間にも臨床研究論文・学会発表は当然として、基礎研究の素養も問われる。レジデントもラボで時々実験みたいなことをしていたりする*2

実績を積み上げることのできた一握りがファカルティに応募できる (おそらくそれ以外は、クリニックに就職したり母国に帰ったりする)。開業医が教授より裕福な日本とは真逆で、こちらではファカルティの地位は驚くほど高い。いまちょうど我々の科でもファカルティの選考が行われていて、二人のClinical assistant professorが週替わりで朝から晩まで選考会にかけられているところ。

このような厳しい登竜門を経て偉くなっていく人達と一緒に仕事をしていると、どうしても日本の大学のシステムについて考えてしまうのだが、今日は自分の研究内容の話をしようとしていたのだ。

 

話が逸れすぎた。

今日のボスとのミーティングで、自分がこれまで1年以上かけてやってきたメインテーマが若干の軌道修正を必要とされそうな雰囲気になった*3。元々自分がリクルートされる武器となった組織学・発生学的手法はサブの論文2本となって無事に結実しそうであるが、メインテーマは別の実験系で、これは全く扱ったことのない分野だったのでイチからのスタートだった。言い訳にはならないが、予備実験の組み方やトラブルシューティングなどの点で、慣れている分野とはどうしても差ができてしまい、帰国までに間に合わない可能性が大きくなってきた。

餅は餅屋、というのは、何でもできちゃう超一流のスーパー研究者*4以外には当てはまるのではないだろうか。自分にできることを確実にやるほうが生産性が高く、ラボにも (そして医学の発展にも)貢献できる気がしてしまう。それは確かに真実なのだが、そんなことばかり言っていたら何も新しいことはできないし、院生の頃と同じかそれ以下になってしまうので切り拓いていくしかないのだけれども。

ボスとしても、自分の技術がラボにある間に、できる限りデータを出してしまいたいのだろう。そんなこんなで、メインテーマに進捗がないまま、サブのテーマが一つ増えることになった。

 

ふわふわと漂いながらも、徒然草の一節を思い出しつつ、目の前の仕事を一つずつ誠実に片付けていけば道は拓けると信じて頑張りたい。

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*1:日本ではそれに深夜までのサービス残業が加わるのだが

*2:本職の研究者からするとお遊びみたいなものではあろうが

*3:研究所に新しく入るはずだった機器を待つだけだった半年間を含む

*4:そんな人がいるのだろうか?