Beyond the Silence

Sound of Science

患者接遇

宮田レイシープさんのホッテントリというか、ブコメ欄を見る限り軽く炎上している主語の大きい案件を読んで思うことを書く。初めに断っておくが自分は宮田さんの舌鋒鋭いブログが好きで全ての記事を読んでおり、この記事は彼自身に対する批判ではない。願わくば宮田さんが良い医師に巡り会うことを。

 
さて、医者と警官 (正式な職業名は医師と警察官であり、俗称は否定的な文脈で使われることが多い気がする)はタメぐちで偉そうな奴が多い、というのは本当だろうか?
診察風景を見たことのある小児科以外の医師をサンプルとして、主観的にカウントしてみたい。あくまで主観。うち開業医を ( )で示した。y軸に言葉遣いを、x軸には年齢を取ってみた。患者接遇が言われ出したのは2000年前くらいからだと思うので、40歳以上と未満で区切ってみた。パッと思い出せる範囲内なので、実数はもっと多い。
 
  40歳未満 40歳以上
常に丁寧語 15 (2) 8 (1)
相手によって使い分け 10 (3) 9 (2)
タメぐち 2 (1) 5 (3)


患者接遇、が医学教育でも言われ出してから十余年経つが、自分を含む多くの若手 (30代まで)の医師は基本的に丁寧語を使っている印象。逆に、年配の先生達は年齢が上なこともあってフレンドリーな話し方をすることが多いように思うが、基本的にはいきなり初対面の相手に大上段から話しかけるようなことはない。例外は年配の開業医の先生達くらいか。

 

「色々な患者がいるからこそ、必要とされない医師もいない」*2

優秀な医学生=良い医師 であるとは限らない - Beyond the Silence

と以前の記事で書いたけれども、丁寧なことば遣いだけでは対応しきれない患者もそれなりに多くて、治療効果を最大化するためには、比較的強いことばやいわゆるパターナリズムに徹したほうがよいことも多い。だから結論としては、多くの医師は患者のキャラクターや緊急度をみて、その対応を使い分けている、ということになる。

 
ちなみに、医師にとって最も嫌な患者は、健康問題を自らの問題として認識していない人々。先生が勝手に治してくれると思っていて、医師が必死に消火活動をしている横で油を注いでいるような輩だ。例を挙げると入院中にもかかわらず酒飲みタバコ吸いまくりの癌患者とか、大酒飲みの末期肝硬変患者などをこれまでに受け持ったが、毎日のように徒労感に襲われた。アンタ病院に何しに来てるのと。閑話休題
 
 
警察官はというと、医師として仕事上で関わった時も、いち市民としてお世話になったときも、不快になるほどの横柄な態度を取られたことは少ない (ゼロではないが、それは横柄な医師や店員、客などの割合とそこまで違うだろうか?)。むしろ、医師にとっての患者「様」*1、警察官にとっての取り締まるべき相手のように、これらの職業は横柄な対象を相手取る必要に迫られることも多いのではなかろうか。クレーマー患者の割合は、病院で「患者様」という言い方がなされ出してから増えたように思われる。お客様は神様、と客側が言い出すのも同様。サービスを受ける側はお金を払っているから偉い、というのは日本独自の価値観で、これはあまりよろしくない*2。それこそ”対等”であるのがふつうであり、提供者側も一定の敬意を払われてしかるべきだと思う。
 
横柄な態度は確かに社会人としては論外であり、宮田さんが出会ったような医師や警察官、そしてサービスを受ける側にもそのような輩が多くないことを願う。多くのブックマークコメントにもあるように、医師だから、警察官だから○○、ではなくて、相手の職業や立場にかかわらず一定の敬意を払っていればストレスに感じないで済む部分もあると思うので、ストレスの少ない日々を過ごされることを願ってやまない。
 

*1:クレーマー患者の意

*2:医療の場合は多くて3割負担、生保などは無料なのだが、公的資金が投入されているということもしばしば無視される