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Beyond the Silence

Sound of Science

読書のススメ 宮城谷昌光

読書

今日は愛読書について書いてみる。

 

自分はそれほど多く本を読むわけではなく、お気に入りの作家の本をひたすら何度も読むタイプだ。食べ物と一緒で食わず嫌い。未だに実家に帰ると父や妹に子供の頃の好き嫌いをネタにされるが、食に関してはずいぶん改善されたように思う。本もいつか分け隔てなく読むようになるだろうか?

 

おそらく否。本を読むために取れる時間、いや人生そのものが短すぎる。必然的に、質の高いことがある程度保証されているという意味で安心できる、お気に入り作家の本が中心になってしまう。

最近は、Kindleで本をいつでもどこでも読めるようになったので、通勤のバスの中などで読んだりもしていて、定期的にウォッチしているいくつかの書評ブログから良さそうなのをピックアップするようになったが、自分の中での主流はまだこちらではなさそう。書評ブログをやっている方々の読書量には到底かなわない。id:fujipon 先生とか、基本読書のid:fuyukiitoichi 冬木糸一さんとか。

 

というわけで、作家単位で紹介記事を書いてみたい。記念すべき?1人目の作家は、直木賞吉川英治文学賞司馬遼太郎賞受賞作家の宮城谷昌光。古代中国を題材にした小説が多く、膨大な調査量から紡ぎ出される物語は、自分がまるで古代にいるかのような錯覚を覚える。中世から近代を描く司馬遼太郎の作品群は「司馬史観」という歴史の一視座を形成しているが、宮城谷は司馬の影響を色濃く受けており、自他共に認める後継者のひとりである*1。もしかすると、日本における中国古代史の分野においては宮城谷史観、なるものが形成されていくのかもしれない。ちなみに自分の文章の句読点の打ち方は、宮城谷氏の影響を受けている気がする。

 

以下に、ランキング形式でお気に入り小説を紹介させて頂きたい。なお、留学中で本が手元に一部しかないので、ほぼ記憶に頼って書くため誤りがあるかもしれない。事実関係はWikipediaに頼って書き、詳細は帰国後に推敲予定。

第一弾ってことで3作選んでみる。

 

1.管仲

管仲(上)<管仲> (角川文庫)

管仲(上)<管仲> (角川文庫)

 

春秋時代・斉の、というより中国きっての名宰相である管仲の生涯を、管鮑の交わりで知られる性格イケメンの鮑叔との友情とともに描く。諸葛亮が自分に比肩する人物として評価し、史記の著者である司馬遷が御者になりたい、と語ったほどの人物の春秋はどのようなものであったのか。

宮城谷はこの本のあとがきで語っているが、管仲と鮑叔の邂逅のシーンを閃いたのがこの小説の全てで天啓だった、という。ふたりの若き日々の描写が瑞々しく、直情径行かつ人情にあふれる鮑叔と、紆余曲折を経た管仲の友情が描かれている。全てを喪い絶望した管仲が自問するシーン、絶望から立ち上がり歩き出すシーンは映像となって脳裏を巡るほど読み返した。管仲のように、鮑叔のように生きたい。

わたしが天祐を請うのはたった一度だ。(中略) 天を撼 (うご)かすほどの生き方をしなければ、天の祐 (たす)けはないのである。

余談であるが、 KOEI三国志のボーナス武将に2人とも出てくるのだが、顔面の格差がすさまじい。

 

2.楽毅 

楽毅〈1〉 (新潮文庫)

楽毅〈1〉 (新潮文庫)

 

戦国時代・中山の将軍、楽毅の生涯を描く。管仲の時代より少し後で、大国晋は分裂して韓、魏、趙になっている。祖国中山が趙に滅ぼされた後*2、斉に恨みを持つ北国・燕の昭王に招聘されて将軍となる。このときの大臣が郭隗で、先ず隗より始めよ、の逸話が残る。

楽毅は昭王の命をうけて燕・趙・韓・魏・秦の5国連合を成し遂げ、斉を決戦で破って70城を落とす。しかし昭王の死により快進撃は止まり、後嗣の恵王に疎まれた楽毅は趙に亡命。昭王への恩を綴った「報遺燕恵王書」は、諸葛亮の「出師の表」と並び忠臣の名文として名高い。なお、秦を含む連合軍が大国斉を破ったことで均衡がくずれ、始皇帝による天下統一のきっかけになったといわれる。

個人的に、古代中国で一番好きな武将。KOEIの三国志シリーズでもボーナス武将として出てくるが、渋いイケメンで能力は武力以外90超え、武力も低くない完全無欠ぶり。

 

3.草原の風 

草原の風  上巻

草原の風  上巻

 

中華において唯一、一度滅びた王朝の再建に成功した人物、光武帝・劉秀。完全無欠の名君として描かれる。昆陽の戦いでは13騎で包囲を突破し、兵を募りつつ数千で数十万の敵軍を撃破。皇帝になるまで陣頭に立って戦ったため兵卒の信望も篤く、さらに先祖の高祖劉邦ばりの人たらしであったようで、配下には雲台二十八将と呼ばれる英傑がキラ星の如く並ぶ。本人の能力や天運もあったに違いないが、この配下たちが、劉秀に天下を取らせ、後漢王朝の礎を築いたといっても過言ではないだろう。前漢建国の立役者である韓信が主君劉邦をさして将に将たり、と評したが劉秀もまさにそれであった。組織の長 (医局の教授とか)とはこの劉秀のようでなければならぬ、と常々思っている。武陵桃源さんの書評には、

劉秀は先祖の劉邦と、そのライバルだった項羽の長所を併せ持ち短所を切り捨てた人物という印象

とあり、まさにそれ。完全無欠すぎ。個人的には大樹将軍・馮異のファン。

読み終わるのに数時間かかるが、やる夫シリーズ (やる夫が光武帝になるようです)も面白くてオススメ。

 

ここまで3冊の本を紹介した。宮城谷氏の歴史小説は、時代背景や漢字のなりたち、主人公の幼少時代 (場合によっては親の幼少期まで!)などを詳細に、時々物語を俯瞰する第三者の目線を取り入れながら記述するので、前半が長い。主人公が成功して俺tueee状態になってからが楽しいのだが、氏はそこには導入部分ほどの重点を置かないことが多いように思う。基本的に名君・名臣の物語なので、時代に没入しつつ感情移入して読むのが清々しく愉しい。

 

長くなったので後半は第2回に。

4.太公望

5.三国志

6.劉邦

7.  沈黙の王

を紹介予定。

*1:春秋時代・宋の宰相、華元を描いた「華栄の丘」の解説に、司馬遼太郎宮城谷昌光の会食のシーンが描かれている。

*2:小説ではこのとき祖国中山にささげた忠誠と趙に抵抗して戦った戦術が絶賛されている