Beyond the Silence

Sound of Science

帰国前追い込みスタート

帰国を数か月先に控え、実験がまた忙しくなってきた。忙しさに並行してブログの更新頻度があがる現象にも名前をつけなければならないが*1、いい案が浮かばない。

 

 

ボスから与えられたテーマは4つ。ノルマ (ロシア語だと最近知った)ではないが、何とか全て形にしたい。日本に帰ったらしばらくは自分で実験する時間は取れないだろうから。

Co-firstの1つめは先日publishされ、3rd authorとしてかかわっている2つめはもうすぐリバイス (一度投稿した論文に対して雑誌編集者がつけてきた注文にこたえること)が完了する。年末年始にかけて投稿を目指していた3つめは、説得力のある論理構成にすることができず、新しいデータが得られたこともあって方針を大幅に変更中。その下支えとなる実験に追われているが、エフォート (自分の労力のうちそれに割ける割合)は50%くらいか。追加実験が大幅に必要になったお陰で、2nd authorからco-firstに昇格する見込み。論文は1stでないと価値がない、と言い切る人もいるくらい、筆頭著者とそれ以外では扱いが違うので嬉しい。

残りは、やっと動き出した4つめの (そして自分が単独1stの)テーマと、このラボに残していく遺伝子発現解析 (論文になれば5つめとなるが)。

 

 

自分の持っている技術を、帰国までにテクニシャンに全て伝授するように言われている。テクニシャンは通常、ラボの備品や動物の管理、頭を使わない単純作業部分の実験補助などで大いに働いてくれる。このポストの能力でラボの生産性も変わってくるので、優秀な人材をリクルートできればラボとしては成功の第一歩。大抵のポスドクより給料良い。日本は独法の謎の5年縛りのお陰で、ひとつのラボに長く勤めるテクニシャンを雇うことができないし待遇も良くないため逸材は他のところに流れるし、こちらでテクニシャンがやっていることの多くは日本では大学院生の仕事になる。ものすごく大きな問題だと思うのだが・・・。

話をこちらのラボに戻すと、テクニシャンに技術指導をしているわけだが、今まで4〜5年かけて完成されてきたいわば職人芸で一朝一夕にコピーできるものではないものを、とりあえずデータを出せるレベルまであと数か月で持っていかなければならない。超早口ネイティブ*2相手に英語で教えるのは難しいがやるしかない。実験というのはうまくいくときは誰がやってもうまくいくが、トラブルシューティングには経験が必要だ。それは日本からメールでやりとりすることになるかもしれない。うちのテクニシャンは修士号を持っているサイエンティストなので、なんとかなるだろうか。

そういえば他のラボからも問い合わせがきていた。こういう実験の技術は、専売特許化するよりも広く敷衍して研究者間で共有したほうがよい。それを目的として、論文にはMaterials and Methodsという項目があり、誰もが再現できるように実験方法を書く。・・・というのが建前だが、皆本当に大事なポイントは書いていない。あえて隠しているのか、文章にすることが難しい匠の技なのかはモノによるのだが。自分の論文にもそれなりに書いたのだが、文字数の都合で割愛せざるを得なかった部分があった。

 

 

昨日のボスとのミーティングで、もう時間がないぞ、巻きでやれ、という感じのことを言われた。家庭の事情もあって9時半〜5時という時短勤務に近い形態で働いているが、結果が出ていれば全く問題にならないというのは素晴らしい (ラボでは専ら手を動かし、論文チェックやデータ整理などは自宅で隙間時間にやっているので、仕事をしている時間としては短くないはず)。2年で論文4報が出ればベストで、4つめが間に合わなくても3つは出せるだろうと思っていて、このような生産的な期間はしばらくないかもしれないので、最大限やるだけやって帰国の準備に入りたい。

 

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写真は本文と全く関係ないのだが、お弁当に入っていた人参が id:hitode99 さんにしか見えなかったので笑

*1:締め切りが近づくとブログを更新してしまう病 - Beyond the Silence

*2:おそらくゆっくり喋ることのできない人種。たまにいるよね