Beyond the Silence

Sound of Science

論文大詰め

日本で再就職して最初の1か月が慌ただしく過ぎていった。ようやく納得のいく形で論文を書き上げたので、それを共著者とボスに送って、久しぶりの一息をついた。

 

ブログにも何度か登場したこの論文、もはやブログネタ化しているきらいもあるのだが、書き始めたのは去年の暮れ。大きな路線変更があったとはいえ、それでも半年くらいかかっている。実験そのものは、30%ほどのエフォート*1で半年くらいのものなので、さほど大がかりなものではない。自分でやった部分が半分、共著者に現在進行形でやってもらったのが半分で、とくに終盤のデータが本採用になったのもあって共著者のデータが多く用いられている。

 

どんなに素晴らしいデータを持っていても発表しなければやってないのと同じなので、論文のほうにしっかり時間をかけるのは大事。だけど、この論文に関しては、あと数か月、いやあと1年ほど、自分の手で実験したかった。発生・再生における遺伝子や蛋白を扱う我々の分野では、「発現解析」と「機能解析」というふたつの柱があり、論文のインパクトを決めるのは主に後者。ここのところずっと発現解析しかしていないが、自分の中でのサイエンスの悦びは遺伝子や蛋白の未知の機能を明らかにすることなので、やや不完全燃焼の感はずっとあって、論文のキーとなるようなデータを提供しても著者としての優先度が低くなってしまうのにも少しだけ心残りがあった。

 

発現解析は、免疫染色やin situ hybridization, PCRなどの手法を用いて行うもので、上手くいけば数週間、長くてもひとつの論文くらいのデータなら数か月で揃う。それに対して機能解析をしようと思うと、以前なら2年くらいかけてノックアウトマウスを作製しなければならなかったし、培養系を中心にやっている最近*2でも、院生やポスドクなど研究に時間のほとんどを使える身分で1年はかかるだろう。これはあくまでも自分が見てきた世界の話で、分野によってそのスピード感は全く違うだろうが。。

 

かなり自分としてはホットな今回の発現解析の論文に、機能解析を追加することができたらそれなりのインパクトがあるはずだと思うと、留学期間が限られていたのが残念に思える。が、論文の価値としては (同様の内容なら)先にpublishされたものが全てなので、論文をしっかり書いて比較的速く投稿できるのは良かった。雑誌に掲載されて形になるまでは気が抜けないが、とにかく留学中の仕事にはやく一区切りをつけたい。

 

平日は夜遅くまで、休日も午前中は仕事なので、平日深夜早朝と休日早朝に睡眠時間を削ってコツコツやってきたが、そろそろ慢性的な睡眠不足が限界に達しようとしている。100%研究に費やせた8月までが懐かしい。ボスからは次の論文に一刻も早くとりかかろう的な愛のメッセージが届いていたが、来週の学会のスライドもこれから作るのと、それが終わったら科研費の申請書、さらに市民公開講座のスライドと、年末までやることが山積している。これからは、いまの職場が臨床的には忙しさのピークだとしても、限られた時間で研究をしていくことになる。今までと違った感覚が必要だろうな。

とりあえず、基礎体力が大事なのはこの数週間で体調を崩して再認識したので*3、向こう数か月はブログ更新もゆっくりめで、運動と瞑想と野菜摂取量を確保しつつ頑張ります。

 

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久しぶりに訪れた公園は、2年間で色々変わっていた。

*1:全労力の何%をその仕事に費やしたか

*2:解析の対象によってはノックアウトマウスが有用かつ必要なこともある

*3:前回この職場に赴任した時も長く風邪をひいていた