Beyond the Silence

Sound of Science

最新型補聴器のレビュー2018

1年以上前のこの記事のつづきです。

www.aurora3373.net

 

補聴器のBIG6、6大メーカーといえば

・フォナック (スイス)

・オーティコン (デンマーク)

・シーメンス (ドイツ)

・GNリサウンド (デンマーク)

・スターキー (USA)

・ワイデックス (デンマーク)

 

日本ではリオンやパナソニック、マキチエなどが作っているが、シェア的にはこのBIG6が強いのではないかな。

補聴器は欧米を主戦場として日々進歩している。この2〜3年で発売された4機種を試聴する幸運にめぐまれたのでレビュー。

 

 

スポンサーリンク

 

 

 

ワイデックス Beyond 440 (日本語サイト↓) RIC (小型耳掛け)タイプ

japan.widex.com

ワイデックス社は10年以上前に補聴器にデュアルCPUを搭載して、素早いレスポンスを得られるようにした先進のメーカーだが、Bluetoothを使ったiPhone等との連携は少し遅れていた。やっと他社に追いついたのがこのBeyond。

補聴器はどのメーカーも、最高峰が50万、ハイクラス35万、エントリー20万みたいな分類で、機種によっては廉価版110もある (すべて片耳あたりの価格)。その違いはバンド数 (バンド数多いほど細かく周波数特性を合わせることが可能)、ノイズリダクションの精度などなど。

最新機種Beyondの440を借用して数週間使ってみたところ、さすがに8年前のモデルとは比べものにならないほど強力で快適な聞こえが得られた。聴力のわりには小さめのチューニングを自分は好むので、出力が小さくて聞こえにくいシーンはあったが、仕事も支障なく電池の持ちも良いので使いやすかった (Bluetooth OFF時)。ちなみにBluetoothでiPhoneと繋いでいると、常時接続されているので2日ほどで電池が切れてしまう。そこは要改善。

聞こえ ◎ S/N ○ 使用感◎

 

ワイデックス Unique 440 CIC (挿耳型)

上記Beyondのひとつ前のモデルで、Bluetooth連携機能以外はほとんどBeyondと変わらないらしい。

仕事でマスクを使うので、耳掛けより耳穴式の方がうんと使いやすい。マスクは耳掛けの本体とイヤフォンの間のケーブルに引っかかる。装着に時間がかからないのも◎。

聞こえはハイパス・ローパスフィルターがかかっている感じで、かなり五月蠅さが軽減され、会話音域を中心にブーストしてある感じ。静かな所ではワイデックスの味付けが好み。騒音下では、後述のオーティコン最新機種のほうがききやすい。

自分の耳は乾燥型耳垢なのだが、これをしているとずっと湿った感じがして痒みが強かった。Unique 330を今度借用する予定で、そちらにはアレルギー低減処理をしてあるらしいので楽しみである。

聞こえ ◎ S/N ○ 使用感○

 

オーティコン Opn (オープンと読む) RIC (小型耳掛け)

https://www.oticon.co.jp/solutions/main/opn

同社前モデルの50倍 (!)の処理速度を持ったCPUを内蔵しており、高速で環境音に対応することによって自然な聞こえを実現している。

納涼会シーズン、実際に飲み会などで試用してみた。今までは個室少人数以外の飲み会は全く会話に入れず苦痛でしかなかったのだが、Opnはシーンによってはかなり会話にキャッチアップでき、限定的ではあるものの飲み会を楽しむことが可能になった。

こちらは少し大きめの音で作ってもらった。かなり器械の音などは響くが、これまでになく会話が聞き取りやすい。無理に集中しなくても聞こえるので疲れない。

Opn1、2、3とこちらも3段階のモデルがあり、1は両耳100万くらいしそう。聞こえは最強だと思うが、電池の減りが異様に早い。高性能CPUの宿命?設定の問題?

RICなのでゴム紐のマスクとの相性が悪い。それをさしひいても、この聞こえは手放せなさそう。

 聞こえ ◎ S/N ☆ 使用感○

 

GNリサウンド リンクス3D 9 挿耳型

www.resound.com

こちらは、RIC (小型耳掛け)ではなく挿耳型でBluetooth対応の機種を探していて見つけた唯一のモデル。ただ、CIC (耳穴にすっぽり入るやつ)ではなく、実際の製品はかなり大きかった。これなら耳掛け式のほうが良い。

GNリサウンドはワイデックスと違う色づけ。低音や高音をしっかり拾う感じなので、鮮やかな音が聞こえてくる。慣れないと相当五月蠅く感じるかも。試用期間が短かったので慣れなかった。補聴器は3か月、少なくとも1か月くらい使わないと脳がフィットしないと思う。

音楽を聴くならこれがいいかな。騒音環境でチェックできていないので、レビューとしては不完全かも。長めに試用させてくれるところがあれば試したい。

聞こえ ○ S/N ? 使用感△

 

 

 

今回試した4機種は全て最上位機種。サクッと買えたら良いのだが、100万はちょっとなぁ・・・。外来に来る難聴の患者さんも皆がこの金額をポンッと出せるわけではなく、一番安い機種を、という紹介状を書く機会も多い。まともな性能で一番安い機種、片耳という条件でも5〜8万くらいするし、可能なら両耳装用が良いので、ある程度経済的な余裕がある人限定になってしまうのが悩みどころ。

日本経済が停滞している間に、これら補聴器を開発している諸外国のGDPは数倍になっているので、海外の製品は全て高く感じる (安さを求めるなら国産メーカーだったり)。とはいえ、生活に直結する問題なので、今のが壊れる前に何とかしたい。

 

値段についてのブコメを頂いたので7/24追記。

補聴器の機種毎の違いは上記のようにバンド数 (周波数毎の調整能力)とノイズリダクションの精度。最上位機種100万ってのは高音、低音、中音など特定の周波数で特に聞こえにくかったり、騒音環境で会話する機会の多い人に向いている。逆に、聴力検査結果が割と平坦だったり、静かなところで使う機会の多い人はエントリーモデルで十分。

 

f:id:aurora3373:20180602190713j:plain

 

医局のマネジメント

数日前に、研修医2年目の女医さんから増田 (anonymous diary)に反響の大きい投稿があった。

私が医療崩壊のトリガーになる未来

これが現実。研修医2年目の頃はギラギラしていて自分には無限の可能性があって何でもできるように見え、メジャー内科や外科に進みたくなるもの。誰も出産育児のことなど慮ってくれない。増田はよく見えている。

2018/07/01 08:41

 

上記のようにブクマしたのだが、この先生は2年目にして非常に先のことがよく見えておられる。というのも、研修医2年目というのはちょっと臨床に慣れて、特に1年目からローテートしている内科・外科の一般的な病棟管理*1が一通りできるようになってきた頃。どんどんできることが増え、自分の実力が伸びていくのを実感できる最初のピークなのだ*2

そんな時期に、花形の診療科で精力的に働く先輩達の姿をみて、このようになりたい、と思うのは自然なことで、17:15にこっそり病棟を抜けて子供の迎えに行く先輩はカッコ良くは見えないだろう。

そんな中で自分の将来を見据え選択することは、なかなか難しい。

 

 

生物学的な男女の差はどうしても覆せるものではないので、どうしても女性側が一時期キャリアを中断せざるを得ない。男性の育休が取りづらいという社会的な課題もあるが本記事では取り上げない。

その制約の中で最良を目指すとなると、問題は、いつどのような形でそのキャリアの中断を迎え、復帰するかという人生のデザイン。思い通りにいかないことのほうが多いけど、過ぎてしまった時間は取り返しがつかないので、なるべく若いうちから様々なキャリアパスがあること、人生における時間の使い方の選択肢について知っておいたほうが良いと思うのだ。女性医師だけでなくパートナーとなる男性も。

 

現場では非難囂々の新専門医制度だが、初期臨床研修終了後の数年間は臨床医としてみっちり修行する (この修行は「研修指定病院」でしないといけない縛りあり)必要がある。医学部医学科における女性の割合は年々増加していて、若干の偏りはあるだろうが3〜4割程度まで増えてきている。大学によっては女性のほうが多い学年もあるとか。なので、医師の生涯教育としての専門医制度も、この「半数女医時代」に対応していかなければならないことは自明なのだが・・・。

20代前半〜半ばでの学生結婚・出産や、30歳過ぎの専門医取得直後の結婚・出産 (大学院進学という「臨床を離れる手段」もある)が、半数女医時代の新しいキャリアパスになっていきそうではある。

 

 

花形の科 (循環器内科とか脳神経外科とか心臓外科とか消化器外科とか)では、多くの場合、臨床に全てを捧げて (=家庭を犠牲にして)働くことのできる人材が求められる。一方で増田の記事にも出ていた「マイナー科」*3は、急変が少なく時間の拘束も弱いことが多いため、色々な働き方がしやすい。

ただし、マイナー科の多様でフレキシブルな働き方を支えるのもまた、仕事に割くリソースの多い一部の人間であるので、科のなかでの不平等はどうしても生じてくる。医局の新しい仕事はその配分になるだろうな。

 

色々考えてたら、こんなツイートがTLに流れてきた。

 

医師の中で最もタフな分野のひとつである心臓外科の先生でも、働く女医のモデルケース病院の、休む女医の分をカバーする側として酷使されると持たない。地域中核病院の中堅で部下に子持ち女医さん、というと、自分と若干重なる部分もあるのだが、科ごとに負担の大きさが全く違うのと、うちの病院はメンバーの力量や人数的に少し余裕があるので何とかなっている。一時期、ひとり鬱になって-1になったときは本当にキツかったので、一見大丈夫そうに見える病院も、意外とギリギリのところで回しているのかもしれない。

医局総体としてのマネジメント能力が問われる時代になっていきそうな予感がするし、それをしない医局は今後生き残っていけないかもしれない。様々なキャリアパスを提示でき、特定の個人に負担が集中しない形でそれを実現できる医局、なんて書いてて思ったけどそんなの夢物語でしかない。いつか現実にできるだろうか?

 

そんなことを考えた夕暮れ。話変わるけどサッカー日本代表頑張れ。

 

f:id:aurora3373:20180120165851j:plain

*1:入院患者の診察と内服や点滴の処方、増悪時の対応、手術のちょっとした助手など

*2:ちなみに外来診療や手術がまともにできるようになるのはずっと後

*3:内科・外科がメジャー科と呼ばれるのに対し、眼科、皮膚科などの専門性の強い、逆に言えば他の領域を苦手とする科はマイナー科と呼ばれる。両者の間に貴賤はない。我々耳鼻咽喉科・頭頸部外科も基本的に首から下が元気な人を扱うのでマイナー科の一員