日本では新年度がスタートした。ここ数日でオススメ本をオススメするブームが到来しているので、そのビッグウェーブに乗るしかない。
偉大なる先達と同じ事をやってもしょうがないので、「生物系の新ゼミ生・大学院生にオススメしたい本/ブログ」という需要があるのかないのかわからない微妙なテーマでのアウトプットを試みる。途中でさらにマニアック化していくが、参考にして頂ければ幸い。
まずは本から。
1.The cell 細胞の分子生物学 第6版 (2017) updated!
- 作者: ALBERTS,JOHNSON,LEWIS,MORGAN,RAFF,ROBERTS,WALTER,中村桂子,松原謙一,青山聖子,斉藤英裕,滋賀陽子,田口マミ子,滝田郁子,中塚公子,羽田裕子,船田晶子,宮下悦子
- 出版社/メーカー: ニュートンプレス
- 発売日: 2017/09/15
- メディア: 大型本
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1冊でかなりの範囲を網羅する生物系のバイブルとしてはこれを勧める。自分も一度通読して、あとは必要な時に調べ物に使っている。巻末に、本におさまりきらなかった章のDVDも付属している。欠点としてはデカくて重いのと、これを読み始めると他のことが手につかなくなること。英語では2014年に6th editionが出ており、2017年に邦訳されたのが上記。 自分は第5版を持っている。
知らなかったけどkindle版もあるらしい。大きめのiPadなら読めそう。
2.アット・ザ・ベンチ
- 作者: キャシーバーカー,Kathy Barker,中村敏一
- 出版社/メーカー: メディカルサイエンスインターナショナル
- 発売日: 2005/08/01
- メディア: 単行本
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実験の手順書というよりは、研究者としてのふるまいの基本を教えてくれる本。ラボで先輩から学ぶのも良いし、身近にロールモデルがいなければこういった本から学ぶのもよいと思う。ちょっとだけ実験のイロハも書いてあったと思う。日本に置いてきたので中身のレビューはAmazonに丸投げ。昔のラボの先輩が翻訳に関わっていて勧められたので読んだら色々面白かった。
3.背信の科学者たち
密室で行われる研究には不正行為がつきものであることは小保方のSTAP事件を例に出すまでもないが、それがいかに普遍的に行われてきたかを解説する良書。大隅先生のレビューが秀逸なのでまたまた丸投げする。
個人的には、遺伝の法則を発見したメンデル (丸としわの話は有名ですよね)でさえも研究不正を行っていたという事実が衝撃だった。この本で読んだのか、他で読んだのかは定かではないが。
自分の仮説を支持するデータが光って見えることは研究を続けていれば誰でもあると思う。だからこそ、強い意志と研究者倫理が必要だ。ノバルティスのディオバン事件のように巨額のカネが動く世界ではなおさら。
4.Schuknecht's Pathology of the Ear
Schuknect's Pathology of the Ear
- 作者: Saumil N. Merchant,Joseph B., Jr., M.D. Nadol
- 出版社/メーカー: Pmph USA Ltd
- 発売日: 2010/08/01
- メディア: ハードカバー
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アマゾンのリンクは著者名が間違っているが、耳の研究者ならば持っておきたい1冊。こっちにきてから同僚に教えてもらい購入した。耳の発生・生理・病理を網羅している。
オススメブログ
5.
このブログでも何度か取り上げた、研究者の卵指南ブログの大御所。ここを知ったのは博士論文を書き始める頃だったので、もう少し早く出会いたかったと思ったものだった。上司や先輩への相談の方法、自分の中での思考の整理法、迫り来る締め切りへの対峙の仕方など、多くのものが得られるはず。
6.論文ウォッチ | AASJホームページ
西川先生のブログ (なのかな?)。最初は英文で論文を読むのも一苦労なので、こういった日本語でトップジャーナルを解説してくれるサイトはためになる。いずれは自分で論文を検索して読む力をつけなければならないが (自分も修練中!)、最初はお世話になって良いと思う。
7.
最近更新頻度が下がっているが、アメリカで長くポスドクを続けておられる方のブログ。研究者として生きていくためには避けて通れない英語の学習法、日米の研究環境の違いなどにも触れてある。
8.
身につまされるものがある、この超ホッテントリ。勉強しつづけること、絶えず取り組むこと、熱意を絶やさないこと、できない自分自身と向き合うこと。全て自分に欠けているものです。天狗になっていた高校時代にこの文章と出会いたかった。今不惑を前にして久しぶりにこの文章を読み、数年前に読んだときと自分が全く変わっていないことに気付き愕然としているところ。今すぐ読め。実行せよ。
9.
わかりやすい解説記事多数。等身大の生物系研究者のブログで、研究は心や身体を病んでまで続けるものではない、ということを思い出させてくれる。研究は”楽しくできる範囲で気楽に”やりましょう。
10.Sizzleがはしる さんの学振申請書の書き方記事
わかりやすかったのでリンクしていましたが削除されています。リンク切れ。
追記
11.
神戸の生物学者さんの大和魂あふれるブログ。別フォルダに入れていたので、これを紹介するのを忘れていた。
ブックマークしているものは以上、他にも感銘を受けたり頷かされたりしたブログは多数。思い出せればまた別エントリ立てます。
最後にお役立ちリンク集。
12.科学論文に役立つ英語
以前にも紹介したかもしれない。茨城大学 大山先生のサイト。学位論文 (初めての英文論文執筆)は、ここ見ながら書いた。今もちょくちょくお世話になっている。
13.Incremental PubMed/MEDLINE Expression Search: inMeXes
同じく論文英語用のリンク。英語で論文を書いていると前置詞や冠詞などで迷うことが多いと思う。どの表現が一般的に使われているかを検索できるのでスピードアップすること間違いなし。大事なのは論理性なので、枝葉の部分でタイムロスをしないように。
14.私のための統計処理
論文を書くために避けて通れない統計学。超苦手。t検定、マンホイットニー検定くらいしか使えない。もっと簡単な説明が欲しいので、アットザベンチの統計学の本を買ってみようと思っているところ。オススメがあったら教えて下さい。
15.やばい雑誌のリンク集
NatureやScienceのような横断的なトップジャーナルから各専門分野まで多岐にわたる雑誌があるが、ふつう学術論文とは良くpeer reviewされたものを指す。しかし世の中には、業績の水増し等のためにカネさえ払えば掲載するような雑誌も数多あり、その可能性が疑われる雑誌がここにリストされている。
16.BioMedサーカス.com - 医学生物学研究の総合ポータルサイト
読んでいるだけで楽しいし勉強にもなる。
他にもいろいろ紹介したいところだが (研究留学ネットとか、Bio technical フォーラムとかもあった!)、実験の反応時間が終わったのでここで一旦擱く。研究は楽しい。が、楽しいことばかりではなく、運・不運、合う・合わないは誰にでもあるので、頑張ってもどうにもならないと感じたら撤退する勇気も大切かもしれない。これから研究の世界に入る方々にも、なるべく楽しい研究生活を送って頂ければ幸いである。