ついに8月になり実験もプライベートも忙しさを増している今日この頃、すごいニュースが。
血液腫瘍は、疾患によって治療法が全く違うので、診断が全て*1。だが記事にもあるように、非常に複雑で難しく、複数の専門医が取り組んでもなお困難な例もある。
医科研で2000万本 (!)の医学論文を学習させた人工知能ワトソンが、患者検体の遺伝子データと照合することで「正診」に辿り着いたという、医療の新たな1ページとなるニュース。
産業革命で単純労働者が機械に置き換えられていったように、医師はAIにとってかわられるのか?
・・・「否」。
なぜなら治療の対象は機械ではなく人だから。人間の身体は、ここがこうなったらこうなる、という単純なものではないし、人対人の関係の中で治療を進めるのが医療のあるべき姿だと思うので。それに実際の手術手技は、現時点ではあくまで術者が主で機械が従。
では、人工知能を活用することで、医療の質を上げることができるのか。それは間違いなく正しい。AIに使われるのではなくAIを使いこなす医師、が、今後必要とされるようになるのかもしれない。
一人の、あるいは複数の医師でも、2000万の論文の内容を必要に応じて引っ張り出すことは難しい。検索の技術は訓練によって上げられるので、時間さえかければ近づける領域かもしれないが。当然ながら医師も、教科書レベルを超えた症例の治療にあたるときは必ず論文を検索し、同様の報告がないかどうか調べるのだが、多くても10〜20本くらいではなかろうか。外来・病棟・手術・雑用・教育・研究など日常のルーチンワークの合間にそれをやるので、正直時間がどれだけあっても足りない。時間を食う単純作業こそコンピュータの出番で、それが実現した暁には、医師は出力された情報を吟味し選択し実行する能力があればよいということになる。今とあまり変わらない気もする。
そして将来、人間よりも人間らしいAIが作られ、患者と共感でき、診断も正確で、投薬ミスもなく、手術までやってしまう時代がくるかもしれない。が、現時点では、ヒューマンエラーを減らす手段として、賢く使ってやれば良いと思う*2。