ちょっと前、らいちさん id:AzuLitchi からidコールを頂いていました。
新型コロナウイルス感染症でよくみられる嗅覚障害についての話題です。
最近のニュースで、
新型コロナで生じた嗅覚障害は回復しにくい可能性が示唆されました。
嗅覚の仕組み
嗅覚は、嗅上皮という非常に限られた領域でのみ感知します。空気中に漂うにおい物質が嗅上皮にある受容体に結合することで、嗅神経に刺激が入る仕組みです。嗅神経は脳の一番前にある神経で、脳から前下方に突出して鼻の天井に繋がっています。
においを感じるためには、
・鼻から空気を吸い込める
・鼻の天井に空気が辿り着く
・空気中のにおい成分が嗅上皮にくっつく
・神経が活動して脳が情報を受け取る
・においがすると認識する
このステップが全部正常に機能することが必要です。
口呼吸だったり、気管切開術後で鼻呼吸ができなかったりするとにおいを感じません。
かぜや鼻炎、花粉症で鼻の粘膜が腫れていると、におい成分が天井まで辿り着けません。鼻腔は鼻甲介という階段状の粘膜の棚、副鼻腔という小部屋で狭くなっているので(その分表面積が増え、鼻腔の目的である異物の除去、加湿・加温に有利な構造)、腫れると空気の通りが悪くなります。
うつ病などで脳の活動が低下した状態になっていると、においをうまく認識できない可能性があります。
新型コロナウイルスに感染すると?
上記のニュースでは、東大とテキサス大の共同研究で、コロナウイルスに感染した嗅上皮がどうなるのかを調べました。
嗅上皮はコロナ感染後に脱落し、においをキャッチできない状態になります。鼻の粘膜障害が強いと再生にも限界があり、完全には治らないこともあるようです。
尤もこれは、新型コロナウイルスに限った話ではなく、感冒に伴う鼻炎でも起こる可能性があります。また、人間と実験動物では全く同じではないため不明な部分もあります。
治療法は?
新型コロナウイルス感染による嗅覚障害は、まだ治療法が確立されていません。しかしながら、一般的に耳鼻咽喉科で行われる感冒後嗅覚障害の治療が有効である可能性があります。
・ステロイド (炎症を抑える)
・漢方薬 (神経や嗅上皮の再生を促進する可能性)
・ビタミン剤 (神経再生に必要なVitB12の補充)
などが用いられます。
健康な若い人にはあまり症状が出ない新型コロナウイルスですが、嗅覚障害だけ出るパターンもあるので、症状があってもなくてもマスク装着・3密の回避・手洗いを継続して頂ければと思います。
リンク:
分かりやすい医療機関のサイト2つ+感冒後嗅覚障害の文献