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Beyond the Silence

Sound of Science

学振とかの申請書の書き方について書いてみる

学振」。研究者の方には馴染みがあり、それ以外の方には何のこっちゃ、という感じだと思います。そろそろ申請のシーズンなので、自分の経験をふまえて色々書いてみようかと。

学振特別研究員という制度 

日本学術振興会特別研究員という制度があり、院生 (DC)、ポスドク (PD)、海外留学とさまざまなステージで給料と研究費がもらえる仕組み。最近では出産や育児などライフイベントを経て復帰した研究者向けのグラントとしての、リスタート研究員的な枠もできてきた。

特別研究員|日本学術振興会

制度の概要 | 海外特別研究員|日本学術振興会

 

メリット↑とデメリット↓

↑ 国内の研究員には給与と研究費、海外特別研究員には渡航する国に応じた給与が支給される。DC 20万、PD 36万、SPD 47万/月くらいだったと思う。海外は400〜500万/年。

↑ 履歴書に学振特別研究員と書けるので、アカデミアに進むならちょっとした箔になる

↓ エフォート100%を要求される。要するにアルバイト等の副収入が原則禁止となり、月数時間、リサーチに関わる業務 (RAとか)のみ認められる。このため、研究に集中できる反面、奨学金+アルバイトの時よりも収入が減ることが多く生活は決して楽にはならない

↓ 給料、と書いたが、別に振興会の職員ではないし福利厚生があるわけでもなく、健康保険は自分で加入。確定申告の際にも税金を持って行かれる。

↓ 当直などのアルバイトで生活費を賄える医師の大学院生の場合、学振DCはデメリットのほうが大きいかもしれない。

 

 申請

そうは言ってもこの厳しいご時世、学振DCは博士課程の大学院生に対して、PDは博士号取得後の研究者に対して給料と研究費が出るので、当然ながら倍率は高い。採択率はDCで2〜3割、PDで1割程度。スーパーポスドクSPDは年に数人の狭き門だ。例年4〜5月が申請シーズンで、3月半ばくらいから申請書を書き始める。申請書には研究の現状と展望や、これまでの業績 (=論文や受賞歴)などを書く。ここで審査員相手に研究の独自性と新規性をアピールし、自分に投資してもらうわけである。数か月かけての長い審査の末に合否が判定される。良く書けた、業績にもすぐれた申請書は書類だけで合格になるが、当落線上のものは面接になる。落選の場合、どの要素が足りなかったのかを、審査員のつけた5段階評価の平均点という形で知ることができる。自分はDCは面接免除合格、海外研究員は2回挑戦したが業績点が足りずに落選した。

 

海外研究員には落選しているので大したことは言えないけれども、院生のときに申請書を書いたことは、この手の文書を書く技術の訓練として研究者人生の財産となった。同じく院生時代にDCを取った先輩がいて親身に指導してくれたお陰である。

書き方のコツをまとめるならば、

  1. 体裁などで突っこみ所をつくらない
  2. 誰にでもわかるように書く
  3. 実現の可能性と夢をバランス良く盛り込む
  4. 早く書き始めて何度も書き直す

だと思う。

 

1.体裁などで突っこみ所をつくらない

これは、ボスに論文の草稿をみてもらうときの注意点

next49.hatenadiary.jp

の、作業的な修正の項目を達成しているものを提出すべき、ということ。ひとりの審査員が何人分もの申請書をみるので、審査員によっては誤字脱字、常体敬体、その他文章の体裁に乱れがあるもの、一言でいうと読みにくいものは中身を確認することなく切り捨てられる可能性がある。企画書などでも同じだと思うが、人に読んでもらうレベルに達していない文章はアカン、ということです。申請書に限定して付け加えるならば、審査員は大抵老眼なので、たくさん書きたいのはわかるけれども読んでもらえるほうを優先すべきで、大きめのフォントを用いるのが吉。

 

2.誰にでもわかるように書く

審査員は当該分野のエキスパートの方々がつとめられるが、それぞれに細分化された専門分野があり、自分の専門以外のことはそこまで詳しくない場合が多い (場末のポスドクよりは博識に違いないが)。なので、自分の研究に興味を持ってもらい評価してもらうためには、平易な言葉でロジカルに書く必要がある。このとき、新しい言葉を作らないこと。学会などその世界でコンセンサスの得られている用語を用いて書く。

 

3. 実現の可能性と夢、どちらも大事

学振は若い研究者に対する投資である。ならば、投資の原則に従ったほうが採択される確率は上がる。即ち、リスクが少なく、高いリターンが見込めることだ。

夢について

科研費はともかく、学振の申請書では大いに夢を語るべきである。国としては、世の中を大きく変えるような研究にお金を使いたい。全ての研究がそういう大きな花をつけるわけでないことは織り込み済みで、爆発力のありそうな、社会に還元できそうな研究計画が投資を呼び込みやすい。具体的には、生命科学系であれば、基礎研究であっても最終的には臨床とリンクして疾患の治療法や原因解明に役に立つだろうことを述べるとベター。

実現の可能性

ただここで大事なのは、決して大風呂敷を広げるわけではなく、現実に即して語られている夢に実現の可能性があるかどうか。それを、段階を踏んでなるべく具体的に書く。そして、他の誰でもなく自分がこれをやる意味っていうのを出せると良い。

Aという遺伝子の発現と機能はこれまで誰も報告していない (新規性)

1年目で発現を、2年目で機能を明らかにする。そのためにはこれこれの実験が必要。うまくいかなければ其々の方法も検討する云々 (具体性)

これは臓器Bの発生にかかわることが知られているので、この遺伝子を操作することで器官再生が可能になるかもしれない (夢)

これまでにこういう治らない疾患をみてきて忸怩たる思いをしてきたので、その解明に貢献したい (社会貢献とのリンク)

 っていう感じで書けたら、審査員のハートを掴めるのではなかろうか?あくまでn = 1の成功例だけど、書き方に困ったときには参考にして頂ければ幸い。

 

4.早く書き始めて何度も書き直す

これが一番大事かもしれない。いきなり完璧な申請書を作ることは難しく、特にDCとかでこの手の書類を初めて作る人だとなおさら。面倒見の良い上司、友人などをつかまえて読んでもらい、専門外の人でも理解できるように、そして変な専門用語を使っていないかどうかをチェックしてもらう。自分の場合、DCの申請書は提出版になったのはversion 9だった。この数回にわたるバージョンアップを経て、申請書を一人で書けるようになった。しつこく付き合ってくれた先輩に感謝。

 

 

科研費の申請書も、より精密な実験計画立案は必要だがこれとほぼ同じだと思う。帰国したら頑張って書かなければ。

 

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 もうすぐ春。