医療費抑制の名目で、耳鼻咽喉科診療に大きな影響がある決定が行われようとしている。
風邪薬と湿布以外は、外すべきではないと思うけどね。→
— tak_sho (@e_ari) 2019年12月1日
市販類似薬は保険対象外 病院処方の風邪薬など 医療費抑制へ政府調整 https://t.co/776JUpGeyG @Sankei_newsより
市販薬、またの名をOTCといい、処方薬と同一成分の薬が薬局で処方箋なしに購入できるものがある。先発品の特許が切れ、ジェネリック薬も出ているような古株の薬が対象だ。
この決定によって削減できると見込まれる医療費は約600億円。ちなみに、2018年度の総医療費は42兆5713億円。
総額からすると微々たるものだが、小さな削減の積み重ねは重要・・・
でもその対象、本当にそれでよいのか?
柔道整復の療養費 3,663億円。
6倍の額が、整骨院等への通院に支出されている。そもそも健康保険から支出する必要があるのかどうかも疑問で、優先順位が違う気がしてならない。
医療費42兆円のうち、自己負担額は5兆円。
自己負担1割、公的資金9割の後期高齢者と、自己負担2割の前期高齢者が医療費の6割弱を使っているのと、高額な医療には所得に応じた助成があるので、平均して1割強の自己負担額に収まっている。そこにもメスが入り、後期高齢者が2割負担になる可能性も取り沙汰されている。反対意見が多く挙がりそうだがどうなるだろうか。
翻って花粉症、アレルギー性鼻炎。
アレルギー性鼻炎は有病率4割とされるので、5000万人弱が罹患している計算。その症状 (鼻閉: はなづまり、鼻水、くしゃみ、かゆみ等)のうち、鼻閉がもたらす経済損失を、千葉大学の岡本教授は年間4兆4千億と試算している*1。
多少のCOIはあるかもしれないが、鼻の手術まで受けた身としては納得のいくところである。すごく単純に考えると、鼻炎の症状がなければGDPが4兆円増えるのだ。
アレルギー性鼻炎の患者は学童・学生・社会人など、現在の、そしてこれからの生産年齢人口に多く分布しているので、鼻炎治療を抑制することは何のためにもならない。
新薬は保険適応でありつづけると思われ、日常診療に大きな影響は今すぐには出ないかもしれないが、その期限はOTC化されるまでの短い間であるし、何よりも、耳鼻咽喉科に患者が通院しなくなることによって、みみ・はな・のどの健康がもたらす生活の質を軽視する風潮が蔓延することを恐れる。
日本耳鼻咽喉科学会は緊急声明を出して再考を促すべきである。
以下脱線。
参考までに、厚労省の統計を抜粋しておく*2。ざっと検索して見つかったのは2016年度だが、大きな違いはない。
まずGDP/GNIに対する医療費の比率。GDP伸びが無く、医療費が増加しているのでこういうことになっている。世界は経済成長しており製薬企業のある主要国のGDPは、NIRA研究報告書*3より転載するが米国を中心に順調に伸びている。これは2008年までのデータなので、この10年をみると日本はもっと沈んでいるだろう。要は、世界経済は成長しているのでそれに伴って薬価や機材など医療コストは上がり続けているということで、話は逸れるが補聴器などもそう。
次は医療費の出所。厚労省データベース。
42兆円の医療費で、患者負担は5兆円。1割強。それ以外は健康保険を含む公費から出ている。75歳以上の後期高齢者に14兆円支払われている。
次に、何に使われているか。出典は同上
ほとんどが医科、つまり歯科治療以外の「病院・診療所」での医療費。薬代が2割でそれに次ぐ。
次が疾患別。循環器系 (ほとんどは心臓と脳)、腫瘍が主。男性は泌尿器 (前立腺)、女性は筋骨格 (リウマチや人工関節など?)、COPD (タバコ肺)、糖尿病などが上位。
最後に、お勧めの鼻洗浄キットを紹介しておく。「エー」と言いながら鼻をお湯で洗うアレ。鼻炎・副鼻腔炎・上咽頭炎の治療はこれが良いです。
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