Beyond the Silence

Sound of Science

大学病院の給与体系を何とかしてほしい

自分の同期にすごく優秀なヤツがいるのだが、その優秀さゆえに長期にわたる大学勤務を余儀なくされている。

本給が低いのでいくつものネーベン (外来とか当直のバイト)を掛け持ちしており、身体を壊さないか心配だ。今月も急患センターに通い詰めで、某市の救急医療はこういう疲弊した大学勤務医によってささえられている。

 

 

信じがたい話かもしれないが、大学病院の高度な医療を行っているスタッフの給与は医師の中で最低ランクである。彼らは大学の「教員」であり、文科省の管轄下で学生教育に携わるものとされていて、「研究」「診療」という他の2つの柱に対してのロイヤリティはほとんどない。

医師ではない他学部の教員より給与を高くしてほしいという主旨ではない。日本の研究力の低下が著しいことは周知の事実であり、優秀な人材が大学で研究を行うことが重要と思っているので、研究に携わる人々がもっと報われてほしい。その上で、大学病院の歪さについての話である。

 

 

教授にまで上っても、市中病院の7〜8年目医師のほうが給料は良いことが多い。況や、講師・助教 (昔で言う助手)は、外来診療、手術、病棟患者の治療、後輩の指導、学生教育に加え研究 (実験や論文執筆など含む)に忙しいにもかかわらず、きちんとした評価を受けていない。

もっと悲惨なのは「医員」と呼ばれる非常勤職員で、彼らは3月31日に一度解雇され、4月1日に再雇用される (ボーナスや昇給を避けるためだろう)。大学の規模、医局の規模、科の性質によってどのくらいこの下積み生活が続くのかは違うが、知人などは留学帰り、卒後15年以上経ってもなおこの「医員」待遇と嘆いていた。

国立大学の医学部を出て大学院博士課程を修了し、留学をして論文を書いて医学の発展に寄与した人材でさえそういう扱いなのだ。グラント (研究費)から自分の給料を支出できないシステムを改善するだけでも効果がありそうなものだが。

 

有能な人材がちゃんと (やり甲斐や名誉だけではなく報酬の面でも)評価されるようになって欲しいものである。

 

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先日行った白川水源。あまりに透明で水が見えない。

 

 

 

以下は付記。

 

大学の医師の給料が低いのは色々な理由があるだろう。そもそも財源がないというのが大きい、というかどうしようもない。大学病院は基本的に赤字である。

処置や手術などの料金は、日本全国どこの病院で受けても一律である。美味しいレストランは提供可能な体験を価格に転嫁することができるが、保険診療で縛られている日本の医療機関にはそれができない。入院費のみわずかに病院の規模によって傾斜がつけられているが、高度な医療にはマンパワーも設備投資も必要なので、重症患者の集まる大学病院ほどコストがかさむ。

入院の医療費は包括医療というシステムのため、この疾患には医療費はいくら、と日数毎に決まっており、薬剤や検査はその日数毎の医療費に含まれてしまうため、精密検査をしたり、患者の希望に応えるためたくさん検査や処置をするとそのコストは全て病院の持ち出しになる (手術や高価すぎる新薬等の出来高算定になる例外はある)。

保険診療の限界が叫ばれているが、日本がバリバリ経済成長してパイを増やすしか、現在の制度を維持しつつ上記を解決する方法はない気がする。