Beyond the Silence

Sound of Science

HPVワクチンが拓く未来 子宮頸癌と中咽頭癌

科学的根拠に基づかない「反ワクチン」論が大勢を占め、70%の接種率が1%以下まで低下してしまったヒトパピローマウイルス (HPV)ワクチン。

子宮頸癌ウイルスとして知られるHPVだが、100以上のサブタイプがあり、特に悪性度が高いものが16型と18型。この2つで子宮頸癌の原因の多くを占める。

 

一部でニュースとして取り上げられているが、医師・ジャーナリストの村中さんが、「HPVワクチンによる有害事象」に対する啓蒙活動に対して科学雑誌の権威であるNature誌からマドックス賞を授けられた。

 

 

現在日本で認可されているHPVワクチンは2種類。2価ワクチンの「サーバリックス」と、4価ワクチンの「ガーダシル」だ。価というのはこの場合、何種類のHPVに効果があるかという意味で、サーバリックスはHPV16と18、ガーダシルはそれに加えて良性腫瘍の原因になるHPV6と11に有効。

これらのワクチンは思春期の少女に接種することが推奨され、HPVに対する免疫を獲得すれば子宮頸癌のリスクを大きく減らすことができる。感染による発癌は、子宮を失うだけでなく進行すれば生命の危機であるし、医療経済学的な視点からも望ましくない。

 

このワクチンを接種された思春期の少女に「副反応」が相次いだとして、反ワクチン論が蔓延り、国としても接種を推奨しないという謎対応になったことの詳細はWikipediaにもある。

ヒトパピローマウイルスワクチン - Wikipedia

 

医学や科学、もっといえば論理的な視点からみればワクチンの妥当性、社会的な有用性は疑うべくもないはずなのだが、日本では「不安」という感情が先行して世論を形成してしまう。それに一石を投じたのが村中さんの孤軍奮闘だ。

科学的裏付けの全くない (ある意味捏造といえるレベルの)ワクチンの危険性を喧伝したマスメディアだが、一連の騒動に対する日本 (国+マスメディア)の対応がWHOから非難されていることや、HPVワクチン中止を訴えた信州大学・池田修一教授らを中心とする研究班がそのデータの杜撰さ (捏造といえるレベルの)を指摘されていることなどはほとんど報道していないようだ。異様である。

 

 

中咽頭癌について

ここで耳鼻科医としては、近年増加傾向にある中咽頭癌について少し書いておきたい。「中咽頭」とは大雑把にいうと「のどちんこ」から舌の付け根までの、呼吸と食事の通り道。いわゆる扁桃腺が輪状に分布し免疫組織としても機能している。

扁桃組織もHPVが感染しやすい部位として知られており、子宮頸癌と同様に癌を発症する原因になる。酒・タバコが原因の「普通の中咽頭癌」に対してHPV陽性中咽頭癌は近年増加してきており、中咽頭癌の半数以上を占めるようになった。実際、いまウチの科で治療中の癌患者さんの多くが中咽頭癌で*1、その半数以上がHPV陽性である。

 

下図は米国の統計*2で、左が人口10万人中の発生件数、右が新規発症件数。過去の統計から今後の患者数を予測している。Cervixが子宮頸癌、Oropharynxが中咽頭癌。子宮頸癌よりも中咽頭癌のほうが患者数が増えてきており、2010年には「中咽頭癌にかかる男性」のほうが「子宮頸癌にかかる女性」よりも多くなってしまった。

 

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HPV陽性中咽頭癌は酒・タバコ中咽頭癌よりも放射線治療や抗がん剤が効きやすいという特徴はあるが、悲惨な経過を辿る症例も多い。予防できるならそれにこしたことはない。このグラフをみると、いち耳鼻科医としては、男性にもHPVワクチンは接種されるべきというしかない。LGBTが市民権を得ている国々ではすでに男性・ホモセクシャル・バイセクシャルへの接種が推奨されているという。もし、男女全てにHPVワクチンが接種されるようになれば、中咽頭癌の大多数を予防できるのではないだろうか*3*4

 

今回の村中さんの闘いが広く日本国民の知るところとなり、科学的思考が雰囲気世論を乗り越えてくれることを願わずにはいられない。

  

 

 

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*1:耳鼻科の癌は他に喉頭癌、下咽頭癌、舌癌、上咽頭癌、甲状腺癌、外耳道癌などがあるが、HPV発癌が起こるのは扁桃組織がある中咽頭癌に限られる

*2:http://ascopubs.org/doi/pdf/10.1200/JCO.2011.36.4596

*3:ワクチンについての面白い数学モデル。疾患根絶のために必要な接種率は99%。

http://dr-urashima.jp/pdf/kaneki-4.pdf

*4:HPV56、58など他の高悪性度HPVからの発癌もあるため、より多くのサブタイプに有効な多価ワクチンが望ましい

JAL JGC修行解脱

学会出張の帰りのフライトをもって、JGC (JAL グローバルクラブ)の修行を解脱しました。

 

計画したのが去年の春、始めたのが今年の1月。もとはといえば、機内でのドクターコールの新制度が始まったのをきっかけに上級会員というものへの興味を持ったのがきっかけだった。当時はまだ留学中だった。

www.aurora3373.net

 

いろいろ調べて、帰国後は地方在住になるので、東京への出張が多い2017年を狙った。海外出張も丁度良くあって、しかもアメリカ東海岸だったので1発で2万FOP (fly on point)近くも溜まったのが有効だった。その後も出張メインで、家族旅行も沖縄 (家族は出張でたまったマイルで特典航空券)。それだけでは少し足りなくて、出張にあわせてちょっとだけ無駄に沖縄行ったりしながら11月末にようやく50,000FOPを超えた。時間に制限があったので、「1回あたりのFOP」重視の修行プランだった。出張費が職場から出る時でも自腹で8,000円足してファーストクラスに乗ったりして、効率よくやってこれたと思う。

始める前、ANAのスーパーフライヤーズ会員 (SFC)と、JALのグローバルクラブで相当迷った。5年後にスターアライアンス系列の国際線に乗る予定があるのでANAにしようかと思ったが、頑張ってビジネスクラス特典航空券を発券すればSFCのメリットはあまりないかなと思ったのでJALにした。

JALにして本当に良かったと思ったことは、機内インターネットが無料でそこそこ速度も出ていて、飛行機の中でも仕事ができることだった。ずっと書き続けていた論文も、機内から留学先までメールしたりとかしていて、移動時間が無駄にならずにすんだ。

 

 

数日前までは3万FOP以上のクリスタル会員だったわけだが、1000円加算のちょっといい席、クラスJ利用時ならJGC専用チェックインを使えるというのを知らなかったので少し勿体無かった。修学旅行生でごった返す羽田で、一度だけすごく役に立った。100人くらいの行列をすり抜けて手荷物検査をパスでき、乗り継ぎ便に間に合ったということがあった。

 

そして修行終わった後に知ったのだが、クリスタル会員も10回まで羽田サクララウンジを使えるのですな。少し損したような気分だけど、羽田にエアポートラウンジの改良版として新しくできた「パワーラウンジ」が実はかなり良くてアメックスなら無料で使えたので、結果オーライというところか。電源があって眺めもいいし (文末の写真もここから)、ドリンク飲み放題だし、悪くないですよ。アメックスだけでなく、ゴールドカード以上なら無料、カードなくても千円くらいで使えるようです。

travel.watch.impress.co.jp

 

 

JALはマイレージ情報が、2日経たないと反映されない。 サービスステイタスの変更はさらに1日かかる。

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これから3日待って

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これに変わった。

オンラインでJALグローバルクラブに入会するにはあと1日待たないといけないらしい。JGCの真価は、ラウンジや優先搭乗よりもむしろファストセキュリティレーンだったり前方座席を確保できて早めに飛行機から降りられるなど時間についてのメリットだと思っている。待つことのできない子供連れの旅行などで真価を発揮するに違いない。

https://www.jal.co.jp/info/dom/121129_2.html

 

 

来年度以降、仕事で東京行く機会も増えそうなので、今回は見送ったANA SFCの修行を国際学会の予定のある2020年に組み込むのもアリかもしれない。

 

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POWER LOUNGEからiPhone SEのカメラで。富士山が小さく見えている

 

 

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