とりあえず3つのテーマで実験を始めることになった。
自由奔放にやっていた大学院時代と違い、こちらのラボは基本的にボスの決めた方針に沿って動く (おそらくそれが普通)。金は出すが口も出す、という感じだ。3つのうち1つが自分のメインテーマで、それは日本人同僚が帰国後に本格的に引き継ぐ予定。
のこり2つは、同僚のJとRがやっている実験にcollaboratorとして加わることに。少し後でわかったのだが、自分がリクルートされた理由がここにあった。2年ほど前から欲しいデータがあって、それがラボ内ではなかなか出なかったらしい。
元々臨床医である自分は、大学院を出てから臨床に復帰してその間はほとんど実験をしていなかったので、3年近いブランクがあった。尤もその3年の間にたくさんの手術症例を経験して専門医も取得した訳で、むしろ有益な時間ではあった。
実験に必要な器具は前年度に購入して使っていたので、それをそのまま船便に入れて持参した。船便の扱いは時に荒く粉々になることもあるらしいが、どうにか無事に到着。これがないと実験が始まらない。
3年前にもなるとさすがに実験の手順から忘れていたのでプロトコルを引っ張り出し、思い出しながらの作業。実験って料理と一緒で、本当のエッセンスはプロトコルには書かれてない。経験が物を言う世界だ。論文のMaterials & Methodsにもそこは敢えて書かれてないようである。
実験を開始したはいいものの、日本から持ってきたスライドガラスにまつわるトラブル発生。そのトラブルシューティングに2週間を浪費した。その間に少しずつ勘を取り戻して、ポジコンがきれいに出たのが10月半ば。スライドガラスは結局こちらで流通しているものに変更。自分の中ではマツナミ最強だったのだが・・・。水が違うためだろうか。
他にもいくつかのトラブルがあったが、どうにかこうにか一定水準のデータが出せるようになったのが11月。あっという間に2か月経っていた。